top of page

No.23 おすすめの本(高橋創)

執筆者の写真: 高橋創高橋創



こんにちは!高橋です。今日は「おすすめの本」というお題をもらいました。もらいましたが、今まで人生で読んできた中でのおすすめの本、を考え出すと絞りきれなくて難しすぎるので、今年読んだ中で面白かった本を5冊紹介したいと思います!長くなりそうな予感はしますがどうかお付き合いください。



『月の裏側』恩田陸

あらすじ
九州の水郷都市・箭納倉。ここで三件の失踪事件が相次いだ。消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、不思議なことに、じきにひょっこり戻ってきたのだ、記憶を喪失したまま。まさか宇宙人による誘拐か、新興宗教による洗脳か、それとも?事件に興味を持った元大学教授・協一郎らは〈人間もどき〉の存在に気づく……。(https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344402621/ より引用)

今年読んだ本、と言いつつ、この本は昔も読んでいて今年も読み返した本です。恩田陸さんは非常に幅広いジャンルの小説を書いていますが、中でも僕が好きなのはSF要素が少し入りつつ、でもそのSF要素が粒立てられて描かれているわけではなくて、今自分が生きている世界の延長にありそうなタッチで話が進んでいく作品です。この『月の裏側』はまさしくそのような作品なのですが、それを可能にしているのも、恩田陸さんが描くキャラクターの魅力なのではないかなあと思います。『月の裏側』の主人公の多聞も、飄々としつつ常識的な感覚も持ち合わせている、でもやっぱりちょっと不思議な、僕が好きな登場人物の一人です(『不連続の世界』という短編集でも多聞は登場するので、こちらもぜひ)。その上で本作のラストはなかなか考えさせられる、そしてゾワッとする終わり方にもなっているので、ぜひ読んでみてください。

ちなみに、恩田陸さんの最新作の『spring』はバレエの天才を描いた作品で、ジャンルはまるで違うのですが、こちらは疾走感というか浮遊感というかそうした感覚があり非常に面白かったのでおすすめです。



『神様の友達の友達の友達はぼく』最果タヒ

内容紹介
言葉は誰のものでもないけど、誰かのものではある。誰かと誰かをつなぐ最果てからの言葉に僕らは耳を澄ます。「ちくま」好評連載をリミックスして待望の書籍化!(https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815545/ より引用)

詩人の最果タヒさんのエッセイ集です。僕はエッセイというものが結構好きです。というのも、エッセイに書かれていることは、実際は自分は考えなかったが、もしかしたら自分も日常で思っていたかもしれないようなことを、自分では書けないような、置けないような言葉の組み合わせで書いてくれているような気がして、読んだ後に自分でも日常を見る目線が変わるというか、多くなるような感覚があるのです。このエッセイも自分で置けないような言葉の組み合わせで、かつ自分と重なってはいるがやはり違う人の視点の言葉が紡がれていて、今まで読んだ中で指折りに良いエッセイ集でした。普段、詩を読むことはほとんどないのですが、このエッセイを機に最果タヒさんの詩集も手にとってみるきっかけになったというのもよかったです。おすすめです。



『虐殺器官』伊藤計劃

あらすじ
​​9・11以降の“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…… 彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?現代の罪と罰を描破する、ゼロ年代最高のフィクション(https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/g/g0000021165/ より引用)

年始にこの本を読んだ時、なぜ今まで読んでいなかったのか!と思うくらいドンピシャにはまったSFでした。どうしてもネタバレになってしまうので詳しい内容には踏み込めないのですが、自由意志って本当にあるのか?と一度でも思ったことがある人や、近未来的なSFが好きな人にはぜひ読んでほしいです。著者の伊藤計劃さんは病気のため、デビュー後わずか2年で亡くなってしまったのですが、本作と、遺作となった『ハーモニー』は本当に引き込まれるSFで、自分が生きて日々過ごしているってどういうことなのかということに関連する哲学的な問いにほんの少しでも想いを馳せたことがある人であれば間違いなく面白いと思うので、ただただ読んでほしいおすすめの一冊です。



『深夜特急』沢木耕太郎

内容紹介
26歳の沢木耕太郎は、軌道に乗っていたルポライターの仕事をすべて投げ出し、香港へと旅立ち、陸路2万キロをバスでロンドンまで目指す旅を始めた。なぜユーラシアなのか、なぜバスなのか。確かなことは自分でもわからなかった。ただ、地球の大きさをこの足で知覚したかったのだ――。産経新聞に連載され、1986年5月に新潮社より「第一便」と「第二便」が刊行。1992年に「第三便」が刊行され、完結。日本冒険小説協会大賞ノンフィクション・評論部門大賞、JTB紀行文学大賞を受賞し、1994年には文庫版全6巻が刊行された。バックパッカーのバイブルとして、今も多くの若者を旅へと駆り立て続けている。(https://www.shinchosha.co.jp/special/midnight-express/ より引用)

僕はあまり予定を決めずに、鉄道を乗り継いだり街をただただ歩いたりするような一人旅が結構好きなのですが、そういう旅って何が面白いのか?と聞かれた時に、すっと差し出したいのがこの本です。旅が終わった時、楽しかったなあと思っても、「旅の〇〇が楽しかった」と言語化してしまうと、旅で実際に過ごしていた感覚がこぼれ落ちていってしまうような気がするので、結局旅の話をするにはただ個別具体的なエピソードを話すしかないよなあといつも思うのですが、『深夜特急』ではそうした旅のエピソードが非常にみずみずしく描かれています。この本を読んで、海外一人旅に行きたい気持ちが非常に高まりました。旅行好きな人にぜひお勧めしたいです。これを読んだだけで旅に出た気持ちになるし、なんならこの本を読んだ後にただ東京の街を歩いているだけでも旅をしている気分になれます。

また、登山家の植村直己が大学を出てから五大陸最高峰登頂を果たすまでを自ら綴った『青春を山に賭けて』も、旅行記ではないですが同じように一人で世界を見てみたい気持ちになるので、こちらもおすすめです。



『死んでいない者』滝口悠生

あらすじ
秋のある日、大往生を遂げた男の通夜に親類たちが集った。子ども、孫、ひ孫たち30人あまり。一人ひとりが死に思いをめぐらせ、互いを思い、家族の記憶が広がってゆく。生の断片が重なり合って永遠の時間がたちがある奇跡の一夜。第154回芥川賞受賞作。(https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163904122 より引用)

あらすじにある通り、ただただ通夜の1日を、たくさんいる親戚たちそれぞれの視点から描いていく、という、まとめてしまうとそれだけの小説なのですが、それだけなのにそれだけではない、非常にどっぷりと小説の世界に浸れる作品です。通夜の日といっても故人は天寿をまっとうしたので、集まった人々もただ悲しみに暮れるというわけではなく、ただの親戚の集まりという雰囲気が漂ってはいるのですが、とはいえ通夜である以上それはなんでもないただの夜ではなく、やはり生と死、家族についての思考がそれぞれの頭に呼び起こされていく、その様子が本当に実感を伴って読めるくらいに描かれています。これは小説でしか絶対にできない、小説だからこそ描けるものだなあと思って、読んで嬉しくなった一冊でした。僕は滝口悠生さんの作品にこれを機に今年はハマっていて、『高架線』や『長い一日』などの他の作品も、あらすじにまとめてしまえば大きな盛り上がりはないように見えるが、小説読んだなぁ、としみじみ思えるとても良い本でした。おすすめです。


以上、今年読んだ中で面白かった本5冊でした!やはり長くなってしまいましたが、ぜひ気になった本があればお手にとってみてください。それでは。

閲覧数:151回0件のコメント

最新記事

すべて表示

תגובות


bottom of page